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自殺の危険因子を、ホームレス状態にある方、その状態から何らかの支援をうけて現在生活保護を受けている方の場合で考える。

厚生労働省が配布している「職場における自殺の予防と対応」の中に「自殺の危険因子」の記載があります。
【出典:高橋祥友「新訂増補 自殺の危険:臨床的評価と危機介入」(金剛出版、2006)】
 
以下転載いたします。
 
①自殺未遂歴 
自殺未遂はもっとも重要な危険因子(自殺未遂の状況、方法、意図、周囲からの反応などを検討)
 
②精神障害の既往
気分障害(うつ病)、統合失調症、パーソナリティ障害、アルコール依存症、薬物乱用
 
③サポートの不足
未婚、離婚、配偶者との死別、職場での孤立
 
④性別
自殺既遂者:男>女  自殺未遂者:女>男
 
⑤年齢
年齢が高くなるとともに自殺率も上昇
 
⑥喪失体験
経済的損失、地位の失墜、病気や怪我、業績不振、予想外の失敗
 
⑦性格
未熟・依存的、衝動的、極端な完全主義、孤立・抑うつ的、反社会的
 
⑧他者の死の影響
精神的に重要なつながりのあった人が突然不幸な形で死亡
 
⑨事故傾性
事故を防ぐのに必要な措置を不必要にも取らない。慢性疾患への予防や医学的な助言を無視。
 
⑩児童虐待
小児期の心理的・身体的・性的虐待
 
相談に来られている方の自殺の危険の大きさを考える時、よく言われるのは、①の自殺未遂歴、②の精神障害の既往ですが、③から⑩の内容にもよく注意を払いたいものです。
 
ホームレス状態にある方、その状態から何らかの支援をうけて現在生活保護を受けている方の場合で考えてみたいと思います。
 
「③サポートの不足」は大きな問題です。家族による支援が途切れている場合がほとんどです。家族との関係が続いていても、本人を責めるような関係になっている(少なくとも本人にはそのように感じられている)こともよく見られます。
支援機関につながっていても、その機関の数や職員数が少ないために十分な相談時間を得ることができない状態です。
また仕事をできる年齢でなくなっているか、仕事につけない状態である方が多いため、職場での関係にそもそも入れていません。また就労支援事業がいろいろと行われている中でそういったプログラム内での孤立も、広い意味で「職場での孤立」の中に捉えることができるでしょう。
 
「⑧他者の死の影響」については相談の際比較的よく遭遇します。その理由としては、ホームレス状態にある方や、そこから生活保護になっている方の人間関係・友人関係が、本人と同じような生い立ち、状況にあることが多く、もともと自殺や事故ということについてハイリスクな集まりの中にあるということでしょう。アルコールや薬物の依存症の方、自傷行為をする方の場合もそのつながりが存在します。相談に来られる時は、過量の飲酒や抑うつ状態が見られることが多いです。
 
「⑨事故傾性」も重要な変化です。それまで生活習慣病の治療を受け、服薬を続け、一定快方に向かっていた方が、受診から遠ざかったり、服薬時に「もう薬はええわ」と伝えてきたりします。自分の体や心に向き合ってきた方が、何かのきっかけで投げやりになっていて、その中には自殺への因子も含まれています。お金の使い方についても、急激に貯金がなくなったりする時は自殺への傾向を検討すべきでしょう。
逆に「日常生活でこういうことに気をつけています」という話がある時は、その内容が相談員からみていかに些細なこと(あるいは余計なこと)に見えたとしても、自分自身に配慮していく道の入り口に来ているのであり、見逃さず支持していくべきでしょう。
 
「⑩児童虐待」
虐待を受けた方に自殺への傾向が強いということは、その領域で活動されている方や関心を持たれている方には概ね理解されていると思いますが、「自殺への危険因子」のなかに項目としてしっかり入っていることに注意すべきです。
虐待を受けていた方の支援をする場合に、その方が援助職の方との間で示す問題行動の多用さと強さに目が行き過ぎてしまって、自殺の部分を忘れないように。自殺に踏み切らない方と踏み切る方では踏み切らない方の方が多いけれども、だからといって「周囲に依存しようとしているだけで、実際には自殺しない」と支援関係を終了するのは善い支援といえません。
傾聴と安全の確保→依存から離れていくプログラム(エンパワメント)という、いつでも迎え入れてくれる安定した支援が得られる場所を社会の中に確保していく必要があるでしょう。

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